無電解ニッケルめっきの工程を解説!基本知識や電解めっきとの違いもご紹介

無電解ニッケルめっきの工程や皮膜特性などの基本情報をご紹介
無電解ニッケルめっきは、電気を使わず、自己触媒作用による化学的還元反応によって金属ニッケルを製品の表面に析出させるめっき技術です。電流分布の影響を受けないため、入り組んだ形状の部品にもムラなくめっきできるのが特徴で、金型、工作部品、精密機器や電子部品など、さまざまな用途で利用されています。
広く活用されている技術ですが、どのような工程で処理が行われるのか、ご存知でしょうか。
今回は、無電解ニッケルめっきの工程をご紹介するとともに、基本的な情報(原理や皮膜の特性、電気ニッケルめっきとの違いなど)ついてめっきメーカーのスズキハイテックが解説します。モノづくりの際の再確認として、ご覧いただけますと幸いです。
無電解ニッケルめっきの工程(処理方法)
無電解ニッケルめっきの工程についてご紹介します。
基本的な工程は以下の通りです。
工程 | (1)脱脂 (2)エッチング (3)スマット除去 (4)表面活性化 (5)触媒付与 (6)密着層(下地層)の形成処理 (7)無電解めっき (8)後処理(乾燥、熱処理など) |
上記の工程全てを行うということではなく、素材に応じて処理工程を組み合わせて処理を行います。
例として、以下に鉄系素材の場合の工程についてご紹介しましょう。
【鉄系素材(A)の工程】
(1)脱脂
(2)表面活性化
(3)無電解ニッケルめっき
【鉄系素材(B)の工程】
(1)脱脂
(2)エッチング
(3)スマット除去
(4)表面活性化
(5)下地めっき
(6)無電解ニッケルめっき
このように、素材によって工程が異なります。素材に適した工程を正確且つ迅速に組み、高品質なめっき技術を提供するにはノウハウ、加工経験が重要です。
スズキハイテックはこれまでさまざまな分野の製品、素材への加工実績が豊富にございます。製品に最適なめっき工程にて処理を行いますので、無電解ニッケルめっきで課題がございましたらお気軽にご相談ください。
無電解ニッケルめっきとは?【基本知識】
無電解ニッケルめっきの工程についてご紹介しました。
ここからは無電解ニッケルめっきの基本的情報について解説します。
無電解ニッケルめっきとは無電解めっきの一種であり、化学的還元反応を利用して製品(母材)表面にニッケルを析出させる技術です。
無電解ニッケルめっきの代表的な特長は以下の通りです。
- 複雑な形状でも処理できる
- 均一な厚みでめっきがつけられる
- 絶縁体にも適用可能
- 耐食性や硬度に優れる
- 熱処理で皮膜特性を変化させることも可能(※母材によります)
このような特長を活かし、無電解ニッケルめっきは自動車部品、電子部品、精密機器などさまざまな分野で使われています。
なお、無電解ニッケルめっきには「ニッケル-リン(Ni-P)」と「ニッケル-ボロン(Ni-B)」の2種類があり、特性が異なるため用途によって選択されますが、最も汎用的に使われているのはニッケル-リンです。(皮膜特性については後述します)
無電解ニッケルめっきの原理
無電解ニッケルめっきが析出される原理についてご紹介します。
めっき液に母材(製品)を設置すると、めっき液中の金属イオン(ニッケルイオン、Ni2+)が還元剤(次亜リン酸ナトリウム(H2PO2)等)によって還元し、母材の表面にニッケルが析出されます。
このとき析出したニッケルが自らを触媒とし、連続的に還元反応が起こります。(自己触媒反応)
この反応はめっき処理の条件(浸漬状態、めっき液の状態)が同一であれば、同じ反応が起こり続けるため、複雑な形の母材にも均一な厚みでめっき皮膜を析出することができます。
品質の良いめっき品を得るためには、めっき液を厳密に管理し、化学反応を適切に制御することが重要です。
無電解ニッケルめっきの皮膜特性、用途
前述したように、無電解ニッケルめっきにはニッケル-リン合金とニッケル-ボロン(ホウ素を共析したもの)の種類があります。ニッケル-リンはリンが含まれる量によって更に3種類(低リン、中リン、高リン)に分類され、それぞれ皮膜特性が異なります。
無電解ニッケルめっきの皮膜特性表
※はんだ濡れ性について、高リンタイプは「劣る」と表記しておりますが、あくまで一般的な特性です。弊社は高リンタイプのはんだ濡れ性を改善するSSNプロセスを提供しております。詳しくはこちらをご覧ください。
このように同じ無電解ニッケルめっきでも特性、またコストにも違いがあるため、製品の用途によって選択します。
それぞれの皮膜特性について、以下のコラムでもご紹介しています。是非ご覧ください。
弊社ではお客様の製品の用途や使用環境などに応じた、最適なめっきの種類のご相談も承っております。お気軽にご相談ください。
無電解ニッケルめっきのメリットとデメリット
数多くの特長を持つ無電解ニッケルめっきですが、一方でデメリットといえる点もあります。
無電解ニッケルめっきのメリットとデメリットは以下の通りです。
メリットとデメリット
メリット |
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デメリット |
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電解ニッケルめっきとの違い
無電解ニッケルめっきと電解ニッケルめっきは、いずれもニッケル皮膜を形成する技術ですが、その工程や仕上がりの違いについて以下の表にまとめました。ご参考までにご覧ください。
電解ニッケルめっきとの違い
電解ニッケルめっき | 無電解ニッケルめっき | |
析出方法 | 電気化学的に析出 | 還元反応によって析出 |
膜厚 | 電流の影響を受けるため、ムラが出やすい | 均一な膜厚で成膜 |
処理が可能な素材 | 導電性のある素材(金属) | 導電性のある素材、絶縁体にもめっきが可能 |
皮膜の成分 | 純度の高いニッケル皮膜 | リンまたはホウ素の合金 |
以下のコラムでは、無電解めっきと電解めっきの違いについて詳しくご紹介しております。こちらも是非ご覧ください。
無電解ニッケルめっきのご相談・ご依頼はスズキハイテックまで
無電解ニッケルめっきの処理の工程、また基本的な知識についてご紹介しました。
無電解ニッケルめっきは幅広い素材にも適用可能ですが、全ての素材が同じ工程で処理できるかというと、そうではありません。
高品質なめっき処理のためには、素材の性質に合わせ、適切な処理工程を組むことが非常に重要です。
弊社は、創業から大正3年に至るまで、自動車部品をはじめ、さまざまな分野で高品質なめっき技術を提供してきました。長年のご依頼の中で、さまざまな素材への加工実績も積み重ねてまいりましたので、素材に応じた最適な工程のご提案も可能です。
また、めっきがつくかどうかがわからない素材へのご相談も承っております。めっきのことでしたら幅広くご相談頂けますので、お気軽に以下の窓口までお問い合わせください。
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