無電解ニッケルめっきのリン濃度の違いによる特長を徹底解説

無電解ニッケルめっきのリン濃度(リン含有量)と皮膜特性の違い
無電解ニッケルめっき(Ni-P)は、リン濃度(wt%)によって性能が大きく異なり、一般的に低リン(P1〜4wt%)、中リン(P5〜10wt%)、高リン(P11〜13wt%)の3種類に分類されます。
無電解ニッケルめっきの皮膜特性は、このリン濃度によって大きく異なります。それぞれの代表的な特長は、以下のとおりです。
低リン | 中リン | 高リン | |
リン濃度(wt%) | P1~4 | P5~10 | P11~13 |
耐食性 | 劣る | 普通 | 良い |
耐摩耗性 | 良い | 良い | 良い |
はんだ付け性 | 良い | 普通 | 劣る |
硬度(析出状態) | 700 | 550 | 500 |
硬度(熱処理後) | 1000 | 950 | 950 |
低リンタイプは高硬度ではんだ付け性に優れる反面、耐食性はやや劣ります。
中リンタイプは耐食性、硬度、はんだ付け性のバランスがいいのが特長です。
高リンタイプは耐食性に非常に優れていますが、はんだ付け性はやや劣ります。
以下では、低リン、中リン、高リンのそれぞれの皮膜特性の違いを詳しく解説します。
無電解ニッケルめっきの低リンタイプの皮膜特性
低リン(リン濃度P1〜4wt%)は、中リン・高リンタイプと比べて析出状態でも高い硬度を持っているのが特徴です。
はんだ付け性も良好で、プリント基板や電子部品などにも多く使用されます。このような特長から、低リンタイプは耐久性や硬さを求める工業製品向けに適した選択肢です。
一方、耐食性や耐酸性は中リン・高リンタイプに比べてやや劣るというデメリットもあります。そのため、長期間雨風にさらされる環境、薬品を用いる環境などで使用する製品、部品へのめっき処理には不向きです。
無電解ニッケルめっきの中リンタイプの皮膜特性
中リン(リン濃度P5〜10wt%)は、耐食性、硬度、はんだ付け性のバランスに優れためっきタイプです。
析出状態での硬度は550〜600Hv程度で、適度な硬さがありますが、熱処理により硬度を950Hv程度まで高めることも可能です。
耐食性についても低リンよりは優れ、屋外や湿度の高い環境でもある程度の安定した性能を保てます。
中リンタイプはめっき速度やめっき液の安定性も優れていることから、汎用性が高く無電解ニッケルめっきのなかでもポピュラーな処理方法となっています。
無電解ニッケルめっきの高リンタイプの皮膜特性
高リン(リン濃度P11〜13%)は、耐食性に非常に優れており、腐食が進みやすい環境下で使用する製品や部品へのめっき処理に適しています。耐酸性も良好で、薬品を用いるポンプやタンクの内部などへ利用されることもあります。
析出状態の硬度は500Hv程度と中リン・低リンタイプに比べやや劣りますが、熱処理によって950Hv程度まで高めることが可能です。
ただし、はんだ付け性は劣るため、はんだ付けによって電子基板などと接合する必要がある製品や部品へのめっき処理には不向きです。
リン濃度の違いによって皮膜特性が異なる理由
無電解ニッケルめっきのリン濃度の違いによって皮膜特性が異なる理由は、リン濃度が皮膜の結晶構造に影響を与えるためです。
リン濃度が低いと、主に微結晶構造が形成されます。微結晶構造は硬度が高いです。
一方、リン濃度が高いと、アモルファス構造に変化します。アモルファス構造は耐食性が高くなりますが、硬度は微結晶構造と比較して低くなることが一般的です。
このように、リン濃度の違いによって形成される結晶構造が皮膜の耐食性や硬度などに影響を与えるため、濃度が変わることで構造が変化し、それに伴って皮膜特性も変わります。
スズキハイテックの無電解ニッケルめっきはリン濃度を選択可能
スズキハイテックでは、お客様のニーズに応じて無電解ニッケルめっきのリン濃度を選択可能です。
低リン・中リン・高リンの各タイプに対応しており、製品の用途、環境、機能などの要件に合わせためっき処理をご提供しています。
たとえば、はんだ付けが必要な部品には低リンタイプ、高い耐食性が必要な部品には高リンタイプ、幅広い要求に対応できる性能が求められる部品には中リンタイプといった形で、適切な無電解ニッケルめっきのリン濃度を選択できます。
また、高リンタイプははんだ付け性が低いというデメリットがありますが、スズキハイテックの独自技術によりこの問題をカバーすることも可能です。
無電解ニッケルめっきのリン濃度による問題を改善するSSNプロセス
無電解ニッケルめっきの高リンタイプは耐食性に優れる一方で、低リン・中リンタイプと比べはんだ付け性が劣り、電子部品などの接合性に問題が生じるケースもありました。
これに対して、スズキハイテックが独自開発したSSNプロセスは、高リンタイプであっても長期間にわたって優れたはんだ濡れ性を向上できます。
すなわち、SSNプロセスは高リンタイプの耐食性をそのままに、良好なはんだ濡れ性を確保できるめっきプロセスです。
SSNプロセスは低リン・中リンタイプにも応用でき、各種リン濃度における無電解ニッケルめっきの弱点を補完できます。
無電解ニッケルめっきのリン濃度のご相談はスズキハイテックへ
無電解ニッケルめっきは、リン濃度の違いによって耐食性、硬度、はんだ付け性などの性能が大きく変化します。それぞれの製品や使用環境に応じて、最適なリン濃度を選ぶことが、製品の最終的な品質を大きく左右します。
スズキハイテックでは、豊富な知識と技術をもとに、用途や要件に応じた最適なリン濃度のご提案が可能です。
はんだ付け性や耐食性の課題には、独自のSSNプロセスで対応し、耐食性と接合性の両立を実現しています。
「どのリン濃度を選ぶべきかわからない」「品質基準に合っためっき処理が可能な会社を探している」などのお悩みは、ぜひスズキハイテックへご相談ください。高品質な無電解ニッケルめっき処理で、お客様の製品価値の向上を全力でサポートいたします。
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